自由同和会 奈良県本部

運動方針

令和元年度運動方針

はじめに

 本年は平成 28 年 12 月に成立した、「部落差別の解消の推進に関する法律」の第 6 条に規定する部落差別の実態調査が実施される。
 この実態調査は、①法務省の人権擁護機関が把握する差別事例の調査、②地方公共団体(教育委員会を含む)が把握する差別事例の調査、③インターネット上の部落差別の実態に係る調査、④一般国民に対する意識調査、以上の 4 項目について実施されるが、①、③の事項については既に昨年度に実施されており、②の地方公共団体並びに教育委員会へも昨年度、本年 5 月末日までに提出することを通知している。④の国民に対する意識調査のみが本年度に行われるが、真に国民の部落差別に対する実態が解明できるような内容にするよう要請していく。
 ④の意識調査の実施の時期によって、実態調査の公表の時期は判明するが、11 月に開催する幹部研修会前に公表されれば、本年の幹部研修会のテーマとして取り上げ、調査結果を基に議論し、来年度以降の活動に生かしていく。
 「部落差別解消法」の成立で、当初の狙いどおり後退傾向にある人権教育・啓発の中での同和問題の取り扱いに歯止めがかかり、人権教育・啓発で同和問題の取り扱いや位置付けについて、再検討する動きが見られるが、その内容については、これまでのような部落差別の悲惨さだけを教える内容は解決を妨げる結果にも繋がることから、旧同和関係者の青年にも希望が持てるように、私どもが明記している部落差別の現状を反映した内容に改めるよう国や地方公共団体に求めていく。
 「部落差別解消法」が成立したことで、一部の団体は法の不足分を補うことを目的として、地方公共団体へ条例の制定を求めての活動が活発化し、それを受け入れ条例を制定する地方公共団体が散見されるが、法案を審議する参議院法務委員会で、どのような調査を想定しているのかの質問に対して、「この法案の下で実態調査を行うというのは、そうした旧同和地区を特定した上で、そこの中の個人の人などを特定した上での調査というのは、全く行う予定ではございません」と、発議者は答弁し、更に、附帯決議においても「国は、部落差別の解消に関する施策の実施に資するための部落差別の実態に係る調査を実施するに当たっては、当該調査により新たな差別を生むことがないように留意しつつ、それが真に部落差別の解消に資するものとなるよう、その内容、手法等について慎重に検討すること」と、旧同和地区の再指定や旧同和関係者の選別で行政によるアウティングにならぬよう懸念を示していることを再確認すべきである。
 また、以前のような個人給付やハード事業を推進する同和対策の復活を目論む一部の団体は、条例制定の要請の際に、平成 5 年に実施された生活実態調査を要請したと仄聞するが、この生活実態調査を実施するには、現在は法的に存在しない「同和地区」(部落)の再指定と同和関係者の選別が必要になり、平成 5 年の実態調査でも 41,4%と同和関係者が少数になり、現在では地区内の公営住宅の一般開放が進んでいることにより一層混住が進み、旧同和関係者が多数居住するという旧同和地区(部落)の概念が変わりつつあるものを、再指定や選別により、未来永劫、同和地区(部落)、同和関係者と呼ばれ続け、固定化することになるので、時計の針を戻し、同和対策の復活や生活実態調査を可能にする内容の条例制定には、明確に反対する。
 都府県本部と各市町村支部は、条例化の動きには注視し、断固として阻止するものとする。
 この間、「障害者差別解消法」、「障害者虐待防止法」「児童虐待防止法」「高齢者虐待防止法」「いじめ防止法」「男女共同参画基本法」「ヘイトスピーチ解消法」等々の個別法が制定されているが、被害者の救済措置が十分ではないことから、「人権擁護法案」を合意形成ができる内容に見直し、成立を求め続ける。

 「障害者差別解消法」は平成 25 年 6 月に制定され、同法第 6 条に規定する「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」が平成 27 年の 2 月に策定公表され、各省庁においても「国等職員対応要領」と「事業者のための対応指針」が作成された後、平成 28 年 4 月から施行されたが、今後はこれらに基づく各省庁の各種施策の実施状況を注視していく。
 地方公共団体についても、障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策の策定と実施を求めるとともに、「職員対応要領」の策定を求めている。大半の地方公共団体は策定済みだが、一部の市町村に遅れがあることから策定を急がせていく。
 また、障害を理由とする差別に関する相談や紛争の防止及び解決を図ることと、差別を解消するための取組を効果的かつ円滑に行うために「障害者差別解消支援地域協議会」の設置を求めているが、都道府県・指定都市は大半が設置済みだが市区町村は大幅に遅れていることから、この「協議会」が早期に設置されるよう市区町村に求めていく。

 民間企業での障がい者の雇用については、平成 30 年 4 月から精神障がい者の雇用も義務化されたことで法定雇用率(2.0%→2.2%、対象企業を従業員数 45.5 人以上に拡大)が引き上げられ、平成 30 年(6 月 1 日現在)の雇用数や実雇用率(2.05%)も過去最高を更新で、雇用障がい者は 53 万 4,769.50 人(身体障害者は 346,208.0 人、知的障害者は 121,166.5人、精神障がい者は 67,395.0 人)の対前年 7.95%(3 万 8,974.5 人)の増になっているが、雇用率と対象企業の拡大で法定雇用率の達成企業の割合は、45.9%で対前年比 4.1 ポイントの減少になっていることから未達成企業に雇用の促進を強力に求めていく。一方、国や地方公共団体は障がい者の定義を拡大解釈し、大幅な水増しをしていたことが発覚したが、急場しのぎで雇用するのではなく、働ける環境を整備し、身体・知的・精神障がいの別に枠を設けて正規雇用できる仕組み作るよう、国や地方公共団体へ働きかける。

 水増し分を差し引いた雇用は、平成 30 年 6 月 1 日現在で、国は 3,902.5 人で実雇用率1.22%、都道府県は8,244.5人で実雇用率2.44%、市町村は2万5,241.5人で実雇用率2.38%、教育委員会は 1 万 2,670.0 人で実雇用率 1.90%になっている。(国、地方公共団体の雇用率 2.3%→2.5%、都道府県の教育委員会 2.2%→2.4%)

 法定雇用率の未達成の民間企業には、1 人につき月 5 万円のペナルティーがあり、国や地方公共団体にはなかったが、今回の不祥事を反省し、国も民間企業と同様のペナルティーを科すことを決めた。

 また、厚生労働省は「障害者の雇用の促進に関する法律」を平成 25 年 6 月に改正し、この改正に基づき、「障害者に対する差別の禁止に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」と「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」を平成 27 年3 月に策定している。

 この指針も平成 28 年 4 月から施行されており、この指針では、募集採用時や採用後での差別禁止や合理的配慮を定めているので、この指針が守られているかの点検も併せて行っていく。

 ノーマライゼーション(共生社会)の観点からのインクルーシブ教育(特定の個人・集団を排除せず学習活動への参加を平等に保障する)システムの推進として、都道府県が特別支援教育専門家等(外部専門家として、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等が 348 人、医療的ケアのための看護師は 1,800 人)の配置、また、特別な支援を必要とする子供への就学前から学齢期、社会参加までの切れ目ない支援体制整備(1,600 百万円→1,796 百万円)、学校における交流及び共同学習を通じた障害者理解(心のバリアフリー)の推進事業(20 地域)など、「障害者差別解消法」の施行を踏まえ、特別支援教育の充実に向けた予算は増額しているが、インクルーシブ教育システム推進事業は減額されていることから、予算の拡充を文部科学省に求めていく。
 虐待については、「障害者虐待防止法」では虐待行為者の範囲を、養護者と障がい者福祉施設の従事者及び障がい者を雇用する事業主としており、特別支援校や特別支援学級で体罰が表面化している中、虐待の温床になっている病院や学校を加えるよう政府に働きかけるとともに、都道府県では「障害者権利擁護センター」を、市町村では「障害者虐待防止センター」の設置が定められているので、都道府県と市町村に通報状況や対応上の問題などを確認する活動を行う。
 児童の虐待については、平成 12 年 5 月に成立した「児童虐待の防止等に関する法律」や「児童福祉法」の度重なる改正から、虐待の定義や通報義務の拡大、警察に対する援助要請、出頭要求の制度化、裁判所の許可を得ての立入調査と臨検・捜索、立入の拒否での罰金の引き上げ、地方公共団体での要保護児童対策知的協議会の設置等、児童相談所や福祉事務所の権限を強化してきているが、平成 29 年の 4 月からは裁判所の許可を得る立ち入り調査や臨検・捜索が迅速・的確な対応ができるよう要件が簡素化されたにも拘らず、悲惨な事件が続いたことから、再び、「児童福祉法」と「児童虐待防止法」の改正案が国会へ提出されている。
 この改正案では、しつけとして体罰を容認する風潮があることから、体罰の禁止が明記され、体罰の根拠とされる民法第 822 条の親権者の「看護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる」との条文を 2 年後に見直すことも付記された。なお、平成 30 年の 1 年間に全国の警察が摘発した虐待事件は 1,380 件(前年比 21.3%増、その内無理心中を含め死亡した子どもは前年より 22 人減の 36 人)で、被害を受けた子どもは 1,394 人(前年比 19.3%増)になり、前年より警察から児童相談所に虐待を受けた疑いがあるとして通告された 18 歳未満の子供は 8 万 252 人(前年比 22.7%増)と最高を記録している。
 学校での「いじめ」については、平成 25 年 6 月に「いじめ防止対策推進法」が制定され、いじめの定義の拡大や明確化されてきたが、未だに「いじめ」による悲惨な自殺が続いていることから、「いじめの防止等のための基本的な方針」を改訂するとともに、「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」が策定された。
 基本方針の改定では、発達障害を含む障害のある児童生徒、性同一性障害や性的指向・性自認(LGBT)に係る児童生徒、東日本大震災により被災した児童生徒等については特に配慮が必要と明記され、インターネット上のいじめが重大な人権侵害に当たり、被害者等に深刻な傷を与えかねない行為であることを理解させる取り組みを行うことも明記された。
 また、いじめの解消は、被害者に対する心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む)が止んでいる状態が3か月以上継続しているとした。
 新たに策定された「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」では、「基本方針」(平成 25 年 10 月)、「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」(平成 26 年 7 月)、「不登校重大事態に係る調査の指針」(平成 28 年 3 月)が策定された後も、学校の設置者又は学校において、いじめの重大事態が発生しているにもかかわらず、「法」、「基本方針」及び「調査の指針」に基づく対応を行わないなどの不適切な対応があり、児童生徒に深刻な被害を与えたり、保護者等に対して大きな不信を与えたりした事案が発生していることを踏まえ、「ガイドライン」を策定したとしているので、今後はいじめによる悲惨な出来事が起こらないように、各学校に設置されている「いじめの防止等の対策のための組織」の点検と、スクールカウンセラーの平成 31 年度までの目標の全公立小中学校 27,500校(現在は 26,700 校)への設置、24 時間子供 SOS ダイヤル、第三者的立場から調整・解決する取組(67 地域)、外部専門家を活用して学校を支援する取組(67 地域)、学校ネットパトロール等の支援(補助率 1/3)、重大事態等発生時の指導助言体制の強化(現状調査や現地支援を行うための職員派遣)、いじめを含め、様々な悩みを抱える児童生徒に対するSNS を活用した相談体制構築の支援(30 箇所)、スクールソーシャルワーカーの平成 31 年度までの目標のすべての中学校区(約 1 万人、平成 30 年度までは 7,500 人)への設置、貧困・虐待対策のための重点配置(1,000 校→1,400 校)されるが、今後役割に期待が持てるスクールロイヤーは 3 箇所と少ないので、予算の更なる拡充とともに、コミュニティ・スクールの拡大を文部科学省に求めていく。
 また、いじめ防止のため道徳が重視され、道徳が正式な教科になり、小学校は平成30 年 4 月から既に全面実施になっており、中学校は平成 31 年 4 月から全面実施になることから、差別を「しない、させない、見逃さない」ことは最高の道徳だと思われるので、道徳も最大限に活用するよう求めていく。
 性同一性障害や性的指向・性自認(LGBT)に係る児童生徒については、既に、平成 27 年4 月に「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」として、学校における支援の実例を上げたものをまとめているが、現場の教職員からより指導し易いものをとの要望を受け、平成 28 年 4 月に教員向けとして「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について」をまとめ、各学校に配布されているので、その実施状況や問題点等を確認する。
 一方、女性の人権については、平成 13 年 10 月から施行された「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(DV法)によって、平成 14 年4月からは「配偶者暴力相談支援センター」が各都道府県に設置され、業務を開始しており、平成 19 年7月の改正により、市町村にも配偶者暴力相談支援センターの設置が努力義務となったが、ほとんどの市町村は設置していないことから、その設置を市町村に求めていく。(平成31 年 1 月現在、全国 283 施設で、その内市町村が設置する施設は 110 施設、
 なお、この支援センターへの相談件数は年々増加しており、平成 28 年度は 10 万 6,367件と 27 年度からは減少しているものの、29 年度は 10 万 6,110 件と 10 万件の大台を突破し、平成 30 年に警察が対応したものでも 7 万 7,482 件で前年度より 5,027 件(前年比6.9%増)増えており、加害者への指導や警告も前年より 6,811 件増の 5 万 1,172 件になり、逮捕や書類送検などの摘発件数は前年より 666 件増の 9,088 件で、いずれも法施行後最多となっている。
 また、これまで身体に対する暴力を受けたものに限り、保護命令を申し立てることができたのに対して、平成 20 年1月からは生命・身体に対する脅迫を受けた者についても、身体に対する暴力によりその生命・身体に重大な危害を受けるおそれが大きい場合には、保護命令を発することができることとなったほか、被害者への接近禁止命令の実効性を確保するため、接近禁止命令の発令されている間について、被害者の親族等への接近禁止命令も発することとされ、さらに、被害者への面会の要求や無言・夜間の電話等を禁止する電話等禁止命令も新設されたことで、平成 30 年では 1,726 件について保護命令が発令された。
 よって、少しでも危害を受ける可能性がある場合は、積極的に保護命令を活用して被害を防いでいく。
 なお、「ストーカー規制法」による相談件数も平成 30 年では 2 万 1,556 件で、前年より 1,523 件減少しているが、つきまといなどを禁止する禁止命令は前年より 495 件増の1,157 件になり、870 件が検挙されている。
 この「ストーカー規制法」は平成 25 年 6 月に改正され、電子メールを対象に加えることや禁止命令等を出すことができる公安委員会の処置が拡大され、国及び地方公共団体は民間の自主的な組織活動の支援のための体制整備に努めることも明記されたが、相談窓口すら設置していない市町村が多数存在することから、その体制整備を都道府県・市区町村に求めていく。
 今後もDVやストーカー被害者の増加が予想されるが、緊急な避難場所としてのシェルター(一時避難所)が不足しているので早急に設置するよう市町村に求めていく。平成 27 年の 8 月に成立し、平成 28 年 4 月に施行された「女性活躍推進法」は、女性の地位の向上のため従業員 301 名以上の企業、国や自治体に女性管理職の割合や採用比率などを数値目標にすることなど、取り組む内容を平成 28 年の 4 月 1 日までに、企業は行動計画を国や地方公共団体は推進計画を策定して公表することを義務付けるものであるが、市町村での推進計画の策定が遅れているので、策定していない市町村に対し、策定を要請していく。また、従業員 300 名以下の中小企業は努力義務になっているので、実効性があるものにするために、義務付ける企業の従業員数を下げるよう、厚生労働省に要請していく。
 「男女雇用機会均等法」により、セクシャルハラスメント(性的言動)は防止の措置を講じることになっているが、平成 28 年 3 月に「均等法」が改正され、マタニティーハラスメント(出産・妊娠)も平成 29 年 1 月からは防止の措置を講じなければならなくなったが、今国会には「労働施策総合推進法」の改正案が提出されたことで成立すれば、パワハラ(上司などの優越的な関係を背景に、業務上必要な範囲を超えた言動で働く環境を害すること)も防止の措置を講じることになり、相談窓口の設置も求められることから、その設置を要請していく。
 また、政治の分野でも、「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」が平成30 年の 5 月に成立しているので、今年の統一地方選挙から対象になることから、政党に女性の候補を増やすよう求めていく。
 私どもも、女性の社会参加を促し、働きやすい環境づくりに努めていく。

1.住環境整備

 住環境整備については、近隣地域との差異がないかを点検しつつも、高齢者・障がい者・妊娠している女性・子どもなど、ハンディキャップがある人たちが自由に社会に参加できる活力ある地域にするため、バリアフリーは当然のこととして、ユニバーサルデザインの用具をも活用する「人権のまちづくり」を視野に入れた取り組みを展開し、ノーマライゼーションを達成する。
 バリアフリーの基準としては、介助がない車イスでどこへでも自由に、安心・安全・快適に移動できるものとする。
 バリアフリーについては、「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の促進に関する法律」(通称、ハートビル法)と「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(通称、交通バリアフリー法)を統合した新法「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(通称、バリアフリー新法)が、施行されているので、この「バリアフリー新法」と平成 28 年の 4 月から施行される「障害者差別解消法」を積極的に活用してバリアフリーの建築物を増やしていく。
 老朽化した改良住宅・公営住宅の建替えを行う際については、空き家の集約化を図り、集約化で空いた土地を民間に払い下げるなど、空き地の有効活用で混住化を促進する。
 また、定期借地権などを活用して持ち家化を考慮しつつも、払い下げを積極的に求めて、これを機会に「人権のまちづくり」を具現化する総合計画の策定を市町村に求めていく。
 改良住宅・公営住宅の空き家がある場合には、混住化を促進するためにも、一般公募制度を活用し、また、若年層の流入を促すために、就学前の子どもを持つ世帯とか新婚家庭や妊婦については優先入居や割引の導入などの工夫を凝らして空き家をなくしていくとともに、高齢者の孤立死を防止する手立てを講じるよう、市町村に要求していく。
 なお、公営・改良住宅の入居者の選定や管理を、未だに地区の自治会や同和運動団体の役員に任せていることは、不正行為や混住化を妨げる温床になることから、公営・改良住宅の管理・運営を市町村が行うよう、市町村に強く要請していく。
 批判の対象になっている改良住宅・公営住宅の家賃については、応能応益制度を取り入れ、暫時、見直しを進めていくことになっているが、応能応益制度を取り入れていない市町村には、早急に制度を取り入れ、家賃の見直しをするよう要求していくとともに、家賃の滞納を市町村と協議しながら早急に改善していく。
 地域の拠点である隣保館については、「部落差別解消法」が成立したことで運営費の削減や廃止は当分の間回避できるものと思われるが、これを機会にあらゆる差別や虐待などの人権侵害や生活困窮者等が相談でき、また、広く市民も利用できる公的施設にすることで交流が生まれ、また、同和対策で住環境が改善された同和地区を眼にすることで、旧同和地区の心象を変えていくことにもなるので、障がいのある人もない人も利用し易い施設にするために、厚労省の改修費補助を積極的に活用してバリアフリー化をも進めていく。
 また、指定管理者制度を活用して活性化を図ることも考慮する。

2.産業基盤の確立と就労対策

 旧同和関係事業者は零細で、かつ、建築・土木関係業者が極めて多いという特定の業種に偏った特有性をもっているので、公共事業が年々減少していくような状況で基盤を確立することは非常に困難ではあるが、合理化や近代化を促進するとともに、生き残りのため共同化や協業化を進めていく。
 業種転換する場合には、政府が中小・零細業者向けセーフティーネットとして実施している各種融資制度の有効活用や各省庁のホームページで最新の情報等を有効利用するとともに、都府県や市町村と協議しながら、きめ細かな指導をしていく。
 未就労者に関しては、ハローワークを最大限活用するとともに、規制の緩和により都道府県も就労の斡旋ができるようになったことと、現在、様々な雇用対策が実施されているので都道府県と連携を図り、未就労をなくしていく。
 平成 27 年 4 月から「生活困窮者自立支援制度が始まっているので、この制度を積極的に活用していく。
 また、専門性を取得するために職業訓練や研修・講座などを有効活用し、就労を確保していく。
 特に、世界でも類のない高齢化社会に進んでいることで、介護福祉士やホームヘルパーが不足しているため、求人の需要が非常に高くなっていることから資格の取得を奨励していく。
 農林漁業者については、TTP(環太平洋戦略的経済連携協定)に参加すれば、安い農産品が輸入されることになるので、付加価値の高いものに移行するとともに、ブランド化を目指し、インターネットを活用して消費者との直販や販売店との直取引など販路の拡大を図っていく。
 このことは、畜産、園芸でも同様であり、漁業については、養殖なども検討していく。
 なお、本格的に導入された「指定管理者制度」では、すべての公共施設を指定管理者に管理をさせることになっているので、隣保館なども対象になることから、各都府県本部で設置しているNPO法人の実情に合った公共施設の指定管理者になり、雇用の促進ができるよう、都道府県・市町村と協議していく。
 いずれにしても、最新の情報を得るため中央本部は各省庁と、都府県本部は都府県と緊密な連携を図り、会員に最新の情報の伝達や相談を行うため、都府県本部内に相談業務を確立していく。
 また、就職差別をなくし、安定した雇用を確保するため、厚生労働省が 100 名以上の従業者を有する企業に設置を求めている「公正採用選考人権啓発推進員」との連携を深めていくと同時に、障がい者の雇用をも促進するため、法定雇用率(常用労働者が 50 人以上の民間企業は 2.0%)を下回る企業については、特に積極的に雇用するよう求めていくが、抜本的に就職差別をなくすため、ILO第 111 号条約の「雇用及び職業における差別に関する条約」を批准し、国内法を整備するよう厚生労働省に求めていく。

3.教育・啓発

 教育・啓発については、既に「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が制定されており、国においては基本計画も策定実施されているが、「部落差別解消法」の成立から、この 2 つの法律を有効活用し、すべての都道府県、すべての市町村に、この基本計画の策定と実施を強く求めていくと同時に、現状に即した内容になっていない場合には見直しを強く求めていく。
 また、基本計画には企業の役割も明記されていることから、厚生労働省が 100 名以上の従業員を有する企業に設置を求めている「公正採用選考人権啓発推進員」との連携を深め、企業内の人権研修の充実に努めていくとともに、未設置の企業には、推進員の設置を求めていく。
 高等学校の授業料の無償化は、平成 26 年度からは所得制限(年収約 910 万円)が取り入れられ、国公私立を問わず、高校等の授業料の支援として、月額 9,900 円が就学支援金として支給される制度に変更され、私立高校の場合には、世帯の年収 350~590 万未満は基本額の 1.5 倍(全日制の場合 14,850/月)、270~350 万円未満は基本額の2倍(全日制の場合 19,800 円/月)、270 万円未満は基本額の 2.5 倍(全日制の場合 24,750 円/月)が支払われ、更に、生活保護世帯や非課税世帯に関しては高校生等奨学給付金制度も設けられているが、高額な入学金が必要な学校も存在することから、都道府県が実施する高等学校等奨学資金制度の一層の拡充を求めていく。
  大学・短期大学の奨学金は、独立行政法人日本学生支援機構や都道府県などでも貸出を行っており、現在では 5 割を超える学生が利用しているといわれている(日本学生支援機構だけでも 4 割を超えている)。
 日本学生支援機構の奨学金は、学力要件がある第 1 種(無利息)と、学力要件がない第 2種(利息付)とがあり、第 2 種の場合は毎月貸与する金額が、2 万円~12 万円(1 万円刻み)と選択できるようになっているが、平成 31 年度予算要求では、有利子 76 万 5 千人(8 千人増)、無利子 56 万 4 千人(2 万 9 千人増)となり有利子から無利子への流れが加速している。
 平成 30 年度からは返済不要の給付型奨学資金制度が始まり、新規として 2 万人分が計上され、平成 31 年度も新規で同様の 2 万人分が計上されているが、月額 2 万円(国公立・自宅)、月額 3 万円(国公立・自宅外 / 私立・自宅)、月額 4 万円(私立・自宅外)でしかなく、第 1 種か第 2 種の奨学資金との併用にならざるを得ないので、金額の増額を求めていく。
 今国会には、低所得者世帯(住民税非課税世帯 270 万円未満は上限まで、380 万円未満は年収に応じて)の学生を対象に大学などの授業料の減免と給付型奨学資金の拡充を目的とする「大学就学支援法」が提出されており、成立すれば 2020 年度からは無償化が一挙に進むが、消費税 10%の増額分を財源にすることから注意深く見守りたい。
 また、入学時特別増額貸与奨学金も、10 万円・20 万円・30 万円・40 万円・50 万円と、入学の時に必要な資金も借りることができる。
 国の教育ローン(日本政策金融公庫)は、利息は高いが 350 万円まで借りることができる。
 これら奨学資金制度を活用し、大学・短期大学の進学率の向上を図っていくと同時に、所得の格差で教育の格差が生じないよう、大阪市が実施している塾代補助である「教育バウチャー制度」を文部科学省に求めていく。
 なお、低所得で奨学金の返済ができず滞納者が増加していることから、「所得連動返還型制度」や「返還免除規定」の導入を求めていたが、平成 24 年度からは「所得連動型返還型無利子奨学資金制度」(第 1 種)が導入され、平成 29 年度からは「新たな所得連動型無利子奨学資金制度」(猶予年限特例)が導入されたが、これは第 1 種(無利子)の奨学資金のみが対象で第 2 種(有利子)の奨学資金は対象外なので、第 2 種(有利子)の奨学資金も導入するよう要請していく。
 また、「障がい者基本法」が改正され、インクルーシブ教育が明記され、また、平成28 年 4 月から「障害者差別解消法」が施行されたことで、すべての学校でバリアフリー化が進み、車イスでも通学できるようになると思われるが、文部科学省により一層の促進を求めていくと同時に、児童・生徒の人権を侵害する教師の体罰や差別言動が少なからず発生していることから、教職員に対する人権研修の徹底をも求めていく。
 平成 20 年3月に「人権教育の指導方法の在り方について」(第3次とりまとめ) が、平成 21 年 10 月には「人権教育の推進に関する取組状況の調査結果について」が文部科学省でまとめられ、各学校に配布されていることから、その実施を求めていくが、その際には、カリキュラムには最大限の関心を持ち、人権教育が計画的に実施されるよう働きかける。
 また、導入することに賛否が分かれている学校選択制度については、旧同和関係者が多数在籍する学校を敬遠するなど、解決しつつある同和問題を逆行させる可能性と、これまでの学校と地域の一体性が瓦解し、児童生徒が減少する地域は崩壊する可能性もあることから、導入には断固として反対していく。
 なお、近年各地で始められた小・中一貫教育については、「学校教育法」が改正され平成 28 年 4 月から施行された。
 その学校の名称は「義務教育学校」になることから、旧同和関係者が多数在籍する学校を、「義務教育学校」にし、交流を深めて同和問題の解決に繋げていく。

4.人権侵害の処理及び被害者の救済

 国家行政組織法の第3条委員会としての「人権委員会」が創設されるまでは、平成 15年の3月に 20 年ぶりに改正された「人権侵犯事件調査処理規程」での対応になるが、差別での泣き寝入りは絶対にさせないとの強い気持ちで、「人権侵犯事件調査処理規程」を有効に活用して救済を図っていく。
 多発する学校でのいじめ問題を始めとする様々な人権問題に対処するため、平成 25 年度からは全国の法務局に、企画担当委員として人権擁護委員が常勤する人権擁護体制の強化が図られているので、積極的に人権救済を行っていく。
 また、「人権擁護法案」と「人権委員会設置法案」のいずれもが、言論や表現の自由を規制するものだとの批判が巻き起こり、結果的に成立に漕ぎ着けないでいるので、国民の支持が得られるようにするため、法案に記述する人権侵害の定義を誰もが分かり易いものに見直す作業を開始する。

最後に

 LGB-T については、「ダイバ-シティ&インクルージョン」と称し、国及び地方公共団体や企業での取り組みが進みつつあるが、大半の当事者はカミングアウトとは無縁な生活を営んでいるのが実情で、地方公共団体や企業での各種制度はカミングアウトが前提になっている。
 私どもは、LGBT 理解増進会が提唱するカミングアウトをしなくても当事者が何の障壁もなく社会生活が営める社会の実現が最も望ましいと考える。
 一方、LGB-T に関する国民の理解は、都市部と地方では大きなギャップがあり、カミングアウトしている当事者と日常的に触れ合う環境とそうではない環境では違いが生じることは至極当然であると思われる。
 ある企業が3年毎に LGB-T に関しての調査を実施しているが、この調査はインターネットを利用しての調査であり、インターネット利用者に限定されるため、地方公共団体や企業には通用しても、一般の国民についての調査の結果は実態と乖離していることが予想されることから、一刻も早い国レベルでの大規模な調査が望まれる。
 制度の拡充も必要なことだが、無理解からの差別・偏見をなくしていくことが最も必要であり、緊急を要するものであることから、一日も早く「LGBT 理解増進法案」が成立し、LGB-T を理解するための理解増進教育・啓発が全国遍く実施されるよう、LGBT 理解増進会とともに、強力な運動を展開する。
 併せて、人権侵害の被害者を簡易・迅速・柔軟に救済を図る目的の「人権委員会」の設置を中心にする新たな内容の「人権擁護法案」が成立できるよう自由同和会の総力を挙げて取り組むものとする。

新着情報

令和元年10月19日
【訃報】
自由同和会和歌山県本部
谷口清次 会長 享年80歳
令和元年十月十八日に御逝去なされました。ここに心から哀悼の意を表すとともに謹んでお悔やみ申し上げます。
令和元年8月1日
ホームページを公開しました。
お問い合わせはこちら